インド発の世界にひとつだけの絵本『夜の木』は、手にするだけで胸がときめく
こんにちは、島本薫です。
吹く風もずいぶん涼しくなり、いよいよ夜の長い季節の始まりですね。今回は、暑さの残る秋の夜長にぴったりの、美しい手づくり絵本の話をお伝えしましょう。
■豊かな時間と人の手が生み出した、インドの「手づくり絵本」
表紙の絵は版によって異なる。初版に使われた「ドゥーマルの木」は、結婚を祝福する木だという。
その本は、手にしただけで胸が震えるものでした。
タイトルは『夜の木』。ずっしりした大型本で、厚みのある黒い表紙には、鮮やかな色彩で一本の木が描かれています。
うねうねと流れるような曲線の木は、中央インドで暮らすゴンド族の伝統的なアート手法で描かれているのだとか。
まだページをめくってもいないのに、こんなにどきどきするなんて――。
とても不思議で、新鮮な感覚でした。これが、手をかけ、時間をかけてつくられた本当の「手づくり」の力なのでしょうか。扉を開ける前から、この本にかけられた豊かな時間の流れが伝わってきます。
なにも急いで読むことはない。ゆったりと、心ゆくまで時間をかけて、一つひとつの絵や言葉を味わえばいい。そんな絵本との付き合い方を思い出させてくれ、自分のまわりの時間がゆっくり流れ出すのを感じます。