今すぐ知りたい! 親子のための、学ぶアプリ探検隊 文系ママに知ってほしい! 科学絵本の楽しみ方(前編)~さとちゃん先生が語る深海の世界の面白さ
光合成に頼らない生きものがすんでいる「チムニーくん(熱水噴出孔:ねっすいふんしゅつこう)」の周辺は地面を暗い色に、コウモリダコのように光が必要な生きものがいる場所は地面を明るい色にしました。文字で説明できない分、目で見て違いがわかるという工夫です。
チムニーくん(左ページ左上)の説明をするさとちゃん先生。手前のぬいぐるみは保育園や小学校での読み聞かせ活動で実際に使っているもの。
――鋭い子どもなら海底の色の違いに気づいて「ママ、何で?」って言いそうですね。ただ、文系ママ的には「光合成に頼らない生きものがいる」というところですでにクラクラしてきました。
深海は光が届かないから生き物のエサとなる植物は生えることができない。だから生き物の豊富な海の浅いほうから、暗い深海へわずかに降ってくる生物の死骸を深海生物がエサとして奪い合う、ある意味過酷な世界なんです。
でも海底から湧き出る熱水に含まれる硫化水素などの“還元物質”は、特定の微生物にとって太陽の光に代わるエネルギーとなります。つまり、地球から湧くエネルギーで生きる微生物をエサとする生きものが熱水噴出孔の周辺に集まっているということ。彼らは比較的平和な生態系を築いているんです。
たとえばゴエモンコシオリエビというヤドカリの仲間は、お腹に生えた毛に還元物質で生きる微生物をすまわせて、それをこそげ取って食べている。自分のお腹に畑を持っているようなものですよね。
――自分の体でエサを育ててるんですね!絵本に出てくるシロウリガイもその仲間ですか。
彼らはもっとユニークで、簡単に言うと口や消化器がないんです。退化してしまっている。
自分の体の中に微生物をすまわせていて、メタンや硫化水素のような“還元物質”を体の中に送り込むと、その微生物がエネルギーを取り出し、植物と同じしくみでエサを作ってくれる。そうやって作られたエサを栄養にして生きています。光が届かない深海ならではの不思議な現象ですよね。
スケーリーフットという巻貝がいるインド洋沖のブラックスモーカー(黒いけむりのような熱水をふきだす熱水噴出孔)は、煙突のような形なので絵本の中では「チムニーくん」というキャラクターで登場させました。海底にはもう熱水は出ていないのに“チムニー”だけが残っている場所もあります。そこを観察すると、以前噴出していた熱水は、なにか地殻変動などの理由でとまってしまったんだろうな、とわかる。