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緘黙症(かんもくしょう)とは? 話さないのではなく、話せない…症状、相談先、接し方まとめ

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緘黙症(かんもくしょう)とは?

緘黙症(かんもくしょう)とは? 話さないのではなく、話せない…症状、相談先、接し方まとめ

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緘黙症(かんもくしょう)とは、発声器官には問題がなく、言葉を理解したり、言語能力があると分かっている人が、ある特定の場面や状況で話すことができなくなってしまう精神疾患です。

たとえば、家庭の中や家族とは元気よく話せるが、幼稚園や学校では無口になり、話すことができなくなってしまいます。これは、言葉の遅れや、発声障害で話すことができないのではなく、精神的な原因があるのではないかと言われています。

緘黙症には、場面緘黙症(選択性緘黙症)と全緘黙症の2つの種類があります。

場面緘黙症の場合、話すことを期待されている特定の場面で、話す言語能力があるにも関わらず話せなくなってしまいます。全緘黙症とは、どの場面でも話せなくなってしまう場合を指す言葉です。

緘黙症は、医学的な診断名としては「選択性緘黙症」と名付けられていますが、日本では「場面緘黙症」と呼ばれるのが一般的です。

"選択"という日本語が、能動的に本人が場面や状況を選んで黙っているような印象を与えやすいため、誤解を避けるために「場面緘黙症」と呼称する人が多いようです。


実際、場面緘黙症のある本人は、話したくても話すことができません。医学的な診断名が"選択"性緘黙症となったのも、場所を選ばされざるを得ないという意味合いで"選択"という言葉が使われていると考えられます。

このコラムにおいては、比較的一般的な呼称である場面緘黙症を用いて症状や対策等を詳しく説明していきます。

場面緘黙症の症状

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主な症状は、ある特定の、話すことを求められる社交場面や状況で話すことができなくなることです。場面緘黙症のある子どもの多くは、家族に対してや、家庭では活発に話しますが、学校やそのほかの社交場では話すことができません。また、家庭の中や家族などの親しい人とも、あまり話すことができない場合があります。話さない代わりに、擬声音を出したり、指をさしたり、筆談したりすることもあります。場面緘黙症のある子どもの年齢が低い場合、つきまといやかんしゃくを起こすこともあります。


場面緘黙症の診断

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診断基準には、大きくわけて、2014年に出版されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計のマニュアル』第5版)と世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の二つがあります。

ICD‐10では、小児期の情緒障害に含まれています。これは、ICD-10では、場面緘黙症は、子どもが発症する疾患という見方が強いことを示しています。一方、DSM-5 において場面緘黙症は、不安障害の一種とされており、不安や恐怖心が一因になっているのではいかという見方をしています。今回はDSM-5の診断基準をご紹介します。

1.ある特定の状況、場面以外では話すことができるが、そのある特定の社会的状況、場面では常に話すことができない。

2.この疾患により、学業上、職業上の成績が適正に評価されない、または対人コミュニケーションを円滑に行えない。

3.この疾患が少なくとも一カ月続いている。


4.場面に応じた知識があり、会話の楽しさを知っているが、話すことはできない。

5.コミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず、自閉スペクトラム症、統合失調症またはその他の精神病障害の経過中にのみ起こるものではない。

http://www.amazon.co.jp/dp/4260019074
場面緘黙症は、5歳前後で発症することが多いですが、話す機会の増える学校へ行き始める時期まで、症状が顕在化しないことが多いです。

研究では、成長とともに場面緘黙症の症状が改善するというものもありますが、研究段階であり、確証はありません。一方、青年期、成人でもまれに場面緘黙症を発症します。

場面緘黙とその他の疾患との関係

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場面緘黙症は不安障害の一種と考えられていますが、その他の疾患・障害との併存もしやすいようです。以下では、場面緘黙症との併存が多い疾患・障害について説明していきます。

場面緘黙症の併存症で最も多いものは、他の不安障害との併存です。
不安障害群の中でも、社交不安症が最も多く、次いで、分離不安症や限局性恐怖症が多いと言われています。

2000年にアメリカの学会でクリステンセンが発表した説によると、発達障害は、不安障害と同じくらい場面緘黙症と併存しやすいと言われています。コミュニケーション障害、発達性協調運動障害、軽度精神発達遅滞、アスペルガー症候群などとの併存が多いようです。

夜尿症(Kristensen, 2000)、聴覚に関する疾患(Bar-Haim, et al., 2004)などを合併している場合が、場面緘黙症でない子どもに比べて多いという報告もあります。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10673837
参考: Kristensen, 2000, Selective mutism and comorbidity with developmental disorder/delay, anxiety disorder, and elimination disorder.

場面緘黙症の相談先

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場面緘黙症は、発症時期である5歳前後だと、まだ学校に通っておらず、他人と話す機会がそもそも少ないため、症状が見落とされがちです。また学校に通い始めてからも性格の問題だと片づけられてしまうこともあります。

ですが、場面緘黙症は、本人が好きで黙っているわけではなく、本人が話したくても話せない状態であることに注意が必要です。子どもが場面緘黙症かもしれないと心配になったら、以下で紹介する相談先に早めに相談に行くことをおすすめします。
保護者や周りの人が少しでも早く症状に気づければ、困難の乗り越え方を手助けすることも可能になりますし、生活しやすい環境を整えてあげることができるかもしれません。一方、支援や治療を受けずにいると、症状改善が遅れたり、社交不安障害などの二次障害が発現するリスクが高くなります。

家族だけで抱え込まず、専門家や周りの人たちの協力を得ながら、本人にあった接し方でサポートすることが大切です。

1. 保健センター
市区町村ごとに設置された、地域の健康づくりの場です。保健師さんが常駐しており、子どもの発達に関する悩みの相談を受けてくれます。場合によっては医療機関や療育施設の紹介をしてくれます。

2. 子育て支援センター
子育て家庭の支援に特化している機関です。自治体運営や医療機関に委託運営されており、保健師さんまたは看護師さんが相談に乗ってくれます。
中には、療育指導を実施をしている子育て支援センターもあるので、お近くのセンターに問い合わせてみてください。

3. 児童相談所
都道府県ごとに設置されており、児童福祉を専門とした機関です。医師、児童心理士、児童福祉士がおり、相談に乗ってもらえます。必要に応じて発達検査を行ってくれる場合もあります。また、全国共通児童相談所ダイアルがあり、189番にかけると24時間365日、児童福祉に関する相談を受けてくれます。

青年・成人の方で場面緘黙症のある方にとっては、電話や対面での相談はなかなかハードルが高いと思います。webで予約できる相談機関、病院や、メールで相談に乗ってくれるところを探すことをおすすめします。

1. 精神保健福祉センター
都道府県ごとに設置されており、精神保健の向上を専門とした機関です。
ここでは電話相談、施設によってはメール相談を受け付けているところもあります。また、精神障害者向けのデイケアを行っているところもあります。

以下は全国の精神保健福祉センターの一覧です。

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html
全国の精神保健福祉センター一覧

2. 心の耳
厚生労働省が行っている、働く人向けの心のポータルサイトです。ここでは、メール相談を受け付けており、場面緘黙症の症状でうまく話せない方や、電話や面接に大きなハードルを感じる方におすすめです。以下はそのリンクです。

http://kokoro.mhlw.go.jp/mail-soudan/
働く人の「こころの耳メール相談」

3. 相談事業所など
上記の他にもお住まいの地域の自治体に相談窓口が設置されている場合がほとんどです。電話や対面での相談が多いのですが、お住まいの地域の自治体に確認してみましょう。

場面緘黙の治療・支援機関

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上記の相談先で紹介された病院へ行くことをおすすめします。直接病院へ行く場合は、心療内科や精神科を受診してみましょう。その上で、必要があればカウンセリングを受けていきましょう。

この他にも、子どもに対しては療育施設や発達支援センターで療育を行うことで、場面緘黙が緩和されるケースもあります。

場面緘黙症は情緒障害の一つとして、公的な支援が受けられます。

情緒障害児短期治療施設では、情緒障害を持つ児童に対して医学的な観点から、心理治療を中心に生活、教育支援を行う場所です。最近では虐待を受けていた児童や、不登校の児童が多く治療・支援を受けているようですが、場面緘黙症による不登校を抱えている児童もいるようです。

詳しくはこちらを参照ください。

http://www.zenjotan.org/index.html
情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワーク

家庭でできること

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1. 子どもが安心できる環境をつくる
子どもの不安を取り除いてあげましょう。リラックスし、安心した環境を整えることが重要です。

2. 答えや反応を無理やり求めることはしない
話せないからといって、強制的に声を出させたり、答えさせるとかえって不安感、不信感が増します。そして話さないからといって、声をかけない、無視するのもよくありません。積極的に声をかけ、言葉による反応がなくても、表情や動きでコミュニケーションをとれるように工夫してみましょう。3. 非言語コミュニケーションの活用
言葉を発することができなくても、ジェスチャーや筆談でコミュニケーションをとってみましょう。例えば、首の動きで、うなずいたり、首を振ったりして、YES、NOの意思表示ができるように促すことも一つの方法です。

4. できたことを褒める
今まで話すことや、感情表現できなかった場面や状況で、話すことや感情表現ができた場合は、どんな小さなことでも褒めてあげましょう。本人の自信につながります。

場面緘黙症を取り巻く環境

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日本では、場面緘黙症という疾患に対する治療法は確立されておらず、研究もまだまだ進んではいません。しかし、場面緘黙症のある子どもや人を支援する団体や。情報発信機関は多くあります。以下では、そうした支援団体の取り組みを紹介します。場面緘黙症を持つ方々の生活の役に立つかもしれません。

場面緘黙症は、教育法上の情緒障害とされており、特別支援教育の対象です。具体的には、通級や支援学級で適切な支援を受けられます。通級とは、在籍は普通学級ですが、週1、2度、普通学級を抜けてその子に合った特別支援を受けられます。特別支援学級とは、在籍は支援学級となり、子どもの障害などに合わせた教育が受けられます。

http://goo.gl/uOPvd1
学校教育法

「かんもくネット」という団体が提供している、「状況によっては声が出づらいです」と書かれたカードです。公共交通機関の使用時や、災害などの非常時に、周囲の人に場面緘黙であることを知らせる上で役立つかもしれません。以下からダウンロードして印刷し使うことができます。

http://kanmoku.org/news/News201508.html
当事者用提示カード

1. Free candle

息を吹きかけてろうそくを消すゲームのアプリです。声が出ない場面でいきなり声を出す練習をするのではなく、息を吐くところから徐々に慣れていく練習をすることが出来るのが長所です。

https://itunes.apple.com/jp/app/free-candle-blow-out-responsive/id434064534?mt=8
iTunes

2. おしゃべり猫のトーキングトム

話しかけると、猫のキャラクターがおかしな声で返してくれるボイスチェンジャーです。ゲーム感覚で声を出す訓練ができます。

https://itunes.apple.com/jp/app/oshaberi-maonotomu-talking/id377194688
iTunes

その他にも、ボイスレコーダーアプリや筆談アプリなどあるので、必要に応じて探し、活用してみてください。

まとめ


場面緘黙症は、単にその人が内気であったり人見知りというわけではなく、本人が話したくても話せなくなってしまう状態です。

性格のせいだと決めつけず、心配な場合は一度相談に行くと良いでしょう。直接相談に行くことが難しい場合は、メールを活用した相談窓口も活用してみましょう。

場面緘黙やその治療法の研究はまだまだ発展途上ですが、支援グッズや、地域ごとの支援団体は多く存在します。本人に合うツールを活用して、コミュニケーションの支援をしていきましょう。本人が安心できる環境を整えたり、ジェスチャーやうなずきなどの非言語コミュニケーションも織り交ぜながら、焦らず、本人が伝えたい気持ちを受け取り、寄り添っていくことが大切です。

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