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中学生にかけて増える?子どものうつ病、症状や処方薬など【医師監修】

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うつ病とは?子どももなる?原因や診断基準


うつ病(鬱病)の症状として、1日中、気分が落ち込み何もする気になれなかったり(抑うつ気分)、興味があったものに興味が持てなくなる・喜びを感じていたことを喜べなくなる(興味または喜びの喪失)がほぼ毎日続くことが挙げられます。そのほか、体重の有意な減少(または増加)や食欲減退(または増加)、不眠・過眠、焦燥感、疲労感・気力の減退、自分に価値がないと感じる(無価値感)、思考力の減退、希死念慮などがみられることもあります。

うつ病は10代半ばから30代までに発症することが多いですが、学齢期の子どもが発症することも珍しくありません。実際に学齢期の子どものうつ病有病率は1~2%、思春期の子どもの有病率は2~5%という調査もあります。 子どもがうつ病になった場合、気分が落ち込むことだけではなく、いらだちや過活動など一見するとうつ病の反対のような症状が目立つこともあります。

また、小学校から中学校の移行期にかけてうつ病が深刻化する傾向があると言われています。小学6年生のうつ病の有病率が1.4%なのに対して、中学1年生になると4.1%と約3倍に上がっているという報告もあります。

適切な治療を行わないと再発やほかの精神疾患の併発リスクがあり、将来の社会生活にも影響を及ぼす可能性があるため、早期に周囲が気づいて対策することが大切と言われています。


https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E6%B0%97%E5%88%86%E8%AA%BF%E7%AF%80%E7%97%87#%E8%A8%BA%E6%96%AD_v42592506_ja
参考:小児と青年におけるうつ病および気分調節症|MSDマニュアル家庭版

https://doi.org/10.11331/jjbm.22.3
参考:松原 耕平, 佐藤 寛, 髙橋 高人, 石川 信一, 佐藤 正二著「小学校から中学校への移行期における子どもの抑うつ症状の発達的変化」行動医学研究 22 巻 (2016)1号 p. 3-8

うつ病の原因は明確に判明しているわけではありませんが、一説では脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」 が減少することにより発症すると言われています。

セロトニンやノルアドレナリンは精神の安定や意欲などに関係しており、減少することで抑うつ気分や興味の喪失といった状態を引き起こすと考えられています。

また、うつ病の原因として遺伝的な要因もあると言われています。といっても、親や親族にうつ病の方がいても必ずうつ病が発症するわけではありません。悲しい出来事やつらい経験などの外的要因と、うつ病になりやすい遺伝的要因が複雑に絡みあうことで、発症に至ると考えられています。

最近では、肥満や脂質異常、葉酸不足といった栄養学的異常も、うつ病の発症リスクと関連しているという研究結果も報告されています。

このように、うつ病の発症にはさまざまな要因が関係しており、特に思い当たるきっかけがなくても発症することがありますので、自身や子どもにうつ病の症状が表れているときは、気のせいと思わずに専門機関に相談するといいでしょう。

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/mental/know/know_01.html
参考:うつ病|厚生労働省 こころもメンテしよう

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E6%B0%97%E5%88%86%E8%AA%BF%E7%AF%80%E7%97%87#%E7%97%87%E7%8A%B6_v42592437_ja
参考:小児と青年におけるうつ病および気分調節症|MSDマニュアル家庭版

https://doi.org/10.11249/jsbpjjpp.26.1_54
参考:功刀 浩, 古賀 賀恵, 小川 眞太郎著「うつ病患者における栄養学的異常」日本生物学的精神医学会誌26 巻 (2015) 1号 p.54-58

ここでは、子どもにおける診断基準を紹介します。


うつ病の診断では、子ども本人と保護者や教師など周りの大人に問診を行い、複数の情報を照らし合わせて診断を行っていきます。問診以外にも標準化された質問票を使用することもあります。

その際に、以下のことを確認します。
・悲しみやいらだちを感じる
・ほぼすべての活動に対して興味や喜びの喪失

こういった症状が連続した2週間のうちほぼ毎日、一日の中で大半の時間表れていることが診断の基準となっています。また、自死に関しての言動の有無も確認します。

そのほかにも、食欲不振や体重減少、睡眠の乱れなどうつ病のほかの症状を確認し、血液検査などの身体的な検査を行うこともあります。

体内の新陳代謝を盛んにする甲状腺ホルモンが低下する甲状腺機能低下症などの病気が抑うつ状態の要因となっている場合もあります。うつ病以外の疾患の影響で気分の落ち込みなどが生じていないか確認していきます。


このような問診や検査を通して情報を集め、最終的に医師がうつ病の診断を行います。

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E6%B0%97%E5%88%86%E8%AA%BF%E7%AF%80%E7%97%87#%E8%A8%BA%E6%96%AD_v42592506_ja
参考:小児と青年におけるうつ病および気分調節症|MSDマニュアル家庭版

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/12-%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%81%A8%E4%BB%A3%E8%AC%9D%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA%E6%A9%9F%E8%83%BD%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E7%97%87
参考:甲状腺機能低下症|MSDマニュアル家庭版

うつ病のサインは?子どもに見られたら注意すべき症状のチェックリスト


うつ病では心身共に症状が表れます。以下のような症状が2週間以上続く場合、うつ病の初期症状の可能性があるため、早めに専門機関に相談してみるといいでしょう。

・ゆううつ、悲しい気持ちが続く
・気力がわかない
・これまで好きだったことにも興味がなくなる
・意欲、集中力、決断力が低下する
・焦燥感、自責感が強くなる
・悲観的になる
・柔軟な考え方ができなくなる
・将来に希望がもてなくなる
・死にたい、消えたいという気持ちになるなど

・眠れない、もしくは寝過ぎる
・食欲が低下する、もしくは食べ過ぎる
・疲れやすく、元気が出なくなる
・頭痛やめまい、吐き気がする
・わけもなく涙が出ることがある
・無表情な顔つきやぼーっとした表情が多くなるなど

うつ病の症状は、「日内変動」と言って一日のうちで強くなったり弱くなったりすることがあり、午前中に最も強く、午後から夕方にかけて少しやわらいでくる場合があるという報告もあります。この場合、朝学校に行けないのに、夕方頃から活動ができるようになるといった場面もみられるかもしれません。

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/mental/know/know_01.html
参考:うつ病|厚生労働省 こころもメンテしよう

子どものうつ病の治療法は?自然に回復する?処方される薬について解説


うつ病は自然に治るものではなく、何も対処しないと悪化する可能性もあります。反対に、適切な治療を受けることで症状が改善していく病気でもあります。

うつ病の治療では大人の場合は薬物療法と精神療法が行われますが、子どものうつ病の場合は精神療法を行い、必要であれば薬物療法も行うという形が多いでしょう。
また、保護者や学校の先生に対して心理教育を行うなど、大人の場合と治療方針に違いがあります。

精神療法では、認知行動療法や対人関係療法などが効果があるとされています。子どもに対して精神療法を行う場合、その子の発達の段階に合わせることや家族との関係に焦点を当てるなど大人とは違ったアプローチを取っていきます。

心理教育では、保護者や教師を対象に子どものうつ病についての知識や、家庭や学校で子どもが過ごしやすくなるような環境調整の方法などのレクチャーが行われます。

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%A8%E9%9D%92%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E3%81%86%E3%81%A4%E7%97%85%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E6%B0%97%E5%88%86%E8%AA%BF%E7%AF%80%E7%97%87#%E8%A8%BA%E6%96%AD_v42592506_ja
参考:小児と青年におけるうつ病および気分調節症|MSDマニュアル家庭版

https://doi.org/10.20615/jscap.57.3_415
参考:傳田 健三著「子どものうつ病」再考|児童青年精神医学とその近接領域57巻 (2016) 3号p.415-424

子どものうつ病の治療では、必要に応じて薬が処方されることもあります。現在のところ、子どものうつ病において処方される薬はSSRIが一般的です。SSRIは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」といい、脳内のセロトニンに働きかけ、うつ病の症状を改善させる薬です。

SSRIには複数の種類がありますが、海外で小児への有効性が認められているSSRIは、日本国内では使用されていません。
現在国内で使用されているSSRIの中には、副作用の可能性が指摘されているものもあります。SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)や三環系・四環系といったほかの抗うつ薬についても、子どもへの使用は有効性や安全性が確認されていないというのが現状です。

そのため、子どもに抗うつ薬を使用する場合には、その効果と副作用を天秤にかけて、十分に検討する必要があります。医師と本人、保護者の間でどのようなリスクがあるかについての共通認識を持つことや、慎重な経過観察が求められています。

副作用として
・けいれん
・めまい
・眠気
・発熱
・吐き気
・動悸
・自殺関連行動など
が見られることがあります。

保護者の方は服用後に心身に変化がないか見守るようにしましょう。

https://doi.org/10.20615/jscap.58.1_146
宇佐美 政英著「薬物療法に関する検討委員会セミナー:児童青年期精神科における薬物療法の実際2─抗うつ薬編─」児童青年精神医学とその近接領域/58 巻 (2017) 1号p. 146-156

子どもがうつ病になったら、家族が気をつけることは?接し方や相談先など


子どもがうつ病かもしれないと思ったときは、話を聞くことが大事です。子ども自身も心の変化に不安や戸惑いを感じていると思いますので、いきなり受診をすすめたりせずに、まずはその不安な気持ちに寄り添うことが大切です。


うつ病と診断されたあとも急に接し方を変えずに、いつでも話を聞く姿勢でいるといいでしょう。また、うつ病の回復には心身の療養も大切な要素です。無理して学校に行ったり、習い事をしていたりする場合は、いったん休むなど療養がしやすい環境をつくっていきましょう。

なかなか回復しないと本人も家族も焦ると思いますが、うつ病は回復に時間がかかると共に再発率も高い病気なので、じっくりと向き合っていくという心構えが大切です。「いつ治るの?」「よくなってきた?」など焦らすような発言はしないように気をつけましょう。

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/mental/ftf/index.html
参考:子どものこころと向きあう|厚生労働省 こころもメンテしよう

https://kokoro.mhlw.go.jp/families/
参考:ご家族にできること|厚生労働省 こころの耳

うつ病の治療は数ヶ月~数年かかると言われています。その間には焦りや不安を感じることも多いと思いますので、そのような気持ちを話せる相談先を見つけておくことも大切です。

子どもの相談先としては、
・保護者
・担任の先生
・スクールカウンセラー
・主治医
などがあります。


家族の相談先としては
・保健所/保健センター
・精神保健福祉センター
・主治医
・うつ病の家族会
などがあります。

また、こころの健康相談統一ダイヤルといって、電話による公的な相談窓口もあります。ほかにも、Webで相談できるサービスなどもありますので、本人、家族共に悩んだときに相談できる場所を確保しておくといいでしょう。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/kokoro_dial.html
参考:こころの健康相談統一ダイヤル|厚生労働省

早めに対応するためにも、子どものSOSサインを見逃さないことも大事です。
精神的なストレスを感じているときには、睡眠、食欲、体調、行動の4つの面でサインが出ると言われています。

睡眠では夜更かししている、睡眠リズムが乱れているなどがあり、食欲では食べる量の増減や体重を過度に気にしている様子があるなどです。体調では顔色の悪さや、腹痛、頭痛、吐き気などがあり、行動では学校へ行きたがらない、表情の変化がなくなる、身だしなみに気を遣わなくなるなどがあります。

ほかにも、自分を傷つけるような行為をしたり、消えたいなどと発言するといったことがSOSサインとしてあります。こういったサインが見られたときには、話を聞くことや一緒に専門家のもとを訪ねるなどの対応をしていきましょう。

詳しいことは厚生労働省のWebサイトもご覧ください。

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/mental/sos/index.html
参考:子どものSOSサイン|厚生労働省こころもメンテしよう

まとめ


うつ病は大人だけでなく子どもが発症することもあり、有病率は小学生よりも中学生のほうが約3倍という調査もあります。治療しないでいると、ほかの精神疾患の併発のリスクもあり、その後の社会生活にも影響が考えられます。

子どものうつ病の治療では、精神療法や心理教育を行い、必要があれば薬物療法も取り入れていきます。 薬物療法では副作用などのリスクもあることから、家族も服用後の様子の変化を見守っていくことが大切です。

うつ病の治療では一般的に長い時間がかかるため、なるべく焦らず子どもの味方であることを示しながら寄り添っていくようにしましょう。それでも悩みを抱えることもあると思いますので、つらい思いを話せる相談先を確保しておくことも大切です。

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