とはいえ、非常に優れた絵本です。日本語訳は詩人の谷川俊太郎さんが手がけています。
みんなと同じことができなかったとしても
最後にもう一冊、水が苦手なワニの子供が主人公である、The Crocodile Who Didn’t Like Waterをご紹介しましょう。みんなと同じことができないワニの子は、心配したり悲しんだりしますが……。
『みにくいあひるの子』の現代版と言ってもいいようなこの本。みんなができることができない、というしょんぼりとした気持ちを勇気付けてくれます。
わくわくドキドキするような物語も素敵ですし、ハッピーエンドの物語もとても素晴らしいものです。頑張って、自分だけできなかったことが、できるようになった、という物語も素敵ですね。
けれど、どんなに頑張ってもどうしても苦手なものがある時には、この本がそっと子供を支えてくれることでしょう。「みんなと一緒」ではない子供の個性が肯定される物語が必要な子供も、クラスに何人かはいるはずです。
悲しいのにうまくSOSを出せなかったり、辛いのに笑ってしまったり。大人と同じように子供の世界も、波風から守られているわけではありません。
今は必要ないかもしれません。けれど、もしも何かが起きた時、実は子供を助ける本も数多く書かれています。そばにある辛さとむきあっていけるように。子供の手助けをする本は、すぐそばにあるかもしれません。
(参考)
Patrice Karst, The Invisible String, (Devorss & Co, 2000)
メアリ ホフマン 著, 杉本 詠美 訳(2018),『いろいろいろんなかぞくのほん』,少年写真新聞社.
Mary Hoffman, The Great Big Book of Feelings, (Frances Lincoln Children’s Bks, 2017)
Kes Gray, Mum and Dad Glue, (Hodder Children’s Books, 2010)
Michael Rosen, Sad Book, (Candlewick, 2008)
マイケル・ローゼン 著, 谷川 俊太郎 訳(2004),『悲しい本』,あかね書房 .
Gemma Merino, The Crocodile Who Didn’t Like Water, (Macmillan Children’s Books, 2013)