エビデンス多数あり。「目標を達成する力」のある子どもは幸せになる!
では、どうすれば子どもの実行機能を高められるのでしょうか?鍵を握るのは、親であるみなさんです。というのも、実行機能を含む非認知能力全般にいえることですが、子どもの非認知能力が伸びるかどうかは、遺伝のほか、教育や家庭環境の影響が非常に大きいからです。
ただ、非認知能力を伸ばすためには、「これをすればいい」ということははっきりとはいえません。でも、さまざまな研究によって、「これをしてはいけない」ということは明確にわかっています。
まず、あたりまえのことですが、虐待や体罰は絶対にしてはいけないこと。というのも、非認知能力の成長をもっとも強く阻害するのが、ストレスだからです。子どもが非認知能力を伸ばしていくには、安心して過ごせる家庭環境、深い親子関係が欠かせません。もちろん、しつけの範囲で叱らなければならないときもあるでしょう。
でも、体罰はもちろん、虐待といわれかねない、子どもの心を壊してしまうような言動は絶対にNGです。
そう考えると、しっかりした親子関係を築くことが第一となるでしょう。世界的に見ると、日本の親子関係はちょっと特殊な面があります。欧米の家庭の場合、厳しいしつけと温かさが両立しているケースが多いのですが、日本の家庭の場合は、体罰を肯定するような親もいまだに多いかと思えば、逆に甘やかし過ぎている親も目立ちます。なぜか両極端なのです。
体罰をするなど厳し過ぎるかかわり方がよくないのは、すでにお伝えしたとおりです。一方、子どもを甘やかし過ぎている親の問題は、「手出し口出し」をしてしまうこと。じつは、実行機能を含む非認知能力を伸ばすキモとなるのが、「子どもの自主性」なのです。
それなのに、子どもがどうしたいかを確認することなく、「こうしたほうがいいんじゃない?」などと、自分の考えを押しつけている親が多いように思います。子どもがやることを一歩後ろから見届ける――そんな姿勢で子育てに臨んでください。
『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』
森口佑介 著/講談社(2019)
『非認知能力を育むリーフレット』
(大阪府教育委員会)森口佑介先生作成協力
■ 京都大学大学院准教授・森口佑介先生 インタビュー記事一覧
第1回:エビデンス多数あり。「目標を達成する力」のある子どもは幸せになる!
第2回:困難に立ち向かえる自信のある子の育て方。何より大切なのは親子間の「アタッチメント」