こんにちは。コラムニストで経済思想史家の鈴木かつよしです。
筆者のもとにも「最近ニュースなどで時々聞く“こども保険”って何なのですか?」というご質問がしばしば寄せられます。
パパ友の一人の40代男性などは「保険料を払っておけば子どもにお金がかかるときに助かるって話ですか?」とLINEで聞いてきました。
彼がそう思うのも無理はなく、“保険”という以上は何か困った事態に遭遇したときに日ごろ払っていた保険料から給付を受けるといったものをイメージするのは当然です。
ところが今話題になっている政府与党の小泉進次郎議員らが提唱している“こども保険”とは全然そういったものとは違いますので、分かりやすく説明する者がいないと変な誤解が蔓延してしまう怖れがあるかもしれませんね。
そんなわけで今回は、経済学士の端くれである筆者から“こども保険”とは何かについて、お話しさせていただこうかと思います。
●こども保険は社会保険料アップで児童手当を増額し幼児教育の実質的無償化を図る政策案
2017年3月29日付の朝日新聞デジタルやNHKニュースなどによる報道を要約しますと、政府与党の若手議員グループによってその日提言された“こども保険”とは、
『幼児教育無償化の財源を確保するために現在の社会保険料をアップして資金を集め、所得制限なしで現行の児童手当に一律月額5,000円~25,000円を上乗せして支給することにより実質的な幼児教育無償化を図ろうという主旨の政策案』
です。
政府与党内にある“教育国債”の案が今以上に国の財政規律を乱すおそれがあることを危惧したうえでの対案でもあります。
子育て真っ最中のパパやママにとっては児童手当の支給額が増えることはありがたい話であることに間違いありませんが、しかしこの制度を”保険”と呼ぶにはちょっと違和感がありはしませんでしょうか?
そうなんです、”保険”というのは“負担者”が将来的なリスクに備えて保険料を支払いつづけることによりリスクに直面したときに“受益者”となれる 。
“負担”と“受益”の関係性がはっきりしている性格のものなのですね。
国民健康保険料も国民年金保険料も失業保険料も保険料を払いつづけていれば給付が必要な事態となったときに受益する権利が発生します。ですから冒頭でご紹介したような筆者のパパ友にとっては”保険”と言えなくもない面もあるけれど、子育て中でない人や子どものいない人・子どもをもつ予定のない人たちにとってみれば”保険”とはいえません。