精神科医もお手上げ!? 労働者の非正規化が“うつ”を引き起こすワケ
嫌なら明日から来ないで 」と一蹴されてしまいます。
●同じ立場の恋人と愚痴を言い合うだけでも違うけれど、デートするにもお金は要る
働く人の非正規化が始まったのは、1980年代に成立した“労働者派遣法”からだと言われています。
その後、2000年代の製造業派遣の解禁を経て着々と進み、今ではわが国で働く人の4割以上が非正規雇用 です。
非正社員の人に配置転換の道など無いというのであれば、せめて同じ立場の恋人と愚痴を言い合うだけでも精神衛生上ぜんぜん違うというもの。
ところが、早稲田大学教授で『恋愛学』の権威である森川友義博士によると、『デートを重ねるにしても“お金・時間・労力”が要ります。非正規雇用で低収入の人たちにとって、恋愛はしたくてもできないというのが実情です』(朝日新聞2016年6月25日付夕刊「ココハツ」欄より)ということになります。
●環境調整は家族、職場、友人、地域、行政などの協力があって初めて可能になる
西川嘉伸医師は言います。
『環境調整は、家族、職場、友人、地域、行政などたくさんの人や組織の協力があって初めて可能になります』
しかしながら、非正社員の人が“職場”に環境調整を望んでもまず無理ですし、“行政”はそもそも労働の非正規化を積極的に推し進めてきた張本人ですから、これまでの行政府とは感性のうえでまったく違うものを選挙などを通して作り上げないことには本質的な協力は期待できないでしょう。
わたしたちは、西川先生のようなかたが『精神科医による治療には限界がある。(メンタルクリニックを訪れる)患者の多くが不健全な社会によって生み出されたことを素直に認めるべきです』と仰るのを、右から左に聞き流してはいけないのだろうと思います。
筆者は個人的にはここまで浸透してしまった非正規という働き方を、軒並み正社員化するということにも無理があろう と考えています。
それよりも正社員が非正社員を人として尊重すること。
正社員でなくても、ある程度の生活可能賃金とある程度の賞与とある程度の退職金を制度として用意することが必要ではないかと思っています。努力したって認められないという疎外感。真面目に一所懸命働いたって賞与も退職金も貰えないという絶望感だけでも改善すること。
難しく長い道のりであってもそれに向けての行動を継続すること。
西川医師のような尊敬すべき人生の大先輩に「精神科医の限界」