2017年9月28日 11:30
名匠トラン・アン・ユン「できれば死ぬまで続けたい」という計画とは?
それはこれまでの作品とは違うところで、音楽というものが観客自身で物語を紡ぐ助けになっているということを発見したからなんです。
編集をしているときに気がついたことは、ある映像に音楽を合わせてみると、観る人が自分で物語を想像する助けになっているのですが、音楽を取ってしまうとその効果が薄れるということでした。そこで、かなり多くの場所に音楽を入れて、観客自身がナレーションを作り出せるようにしたのです。
実際のナレーション部分は監督の奥様が担当しているそうですが、その理由は?
監督
今回、妻には本作の美術についてもすべて責任を持ってやってもらいましたが、ナレーションも担当してもらいました。なぜかというと、現実とのギャップというのが妻の声でないと生まれないということがわかったからなんです。
すごく有名な女優さんにナレーションを頼むこともできましたが、みんながわかってしまうような声だと映画が違う方向へ行ってしまうと思いました。でも、妻の声だとフレッシュになるのです。それは僕の個人的な視点だけではなく、プロデューサーやみんなも同じ意見でしたね。
彼女は素晴らしいパートナーなんですよ。
この物語で誰もが感じるのは、母から娘、そして新たな世代へと受け継いでいくことの大切さ。