2019年6月11日 20:30
没後10年 作家・栗本薫の“濃密な人生がわかる本”2冊
成功者の評伝ではなく、私の奥さん、中島梓/栗本薫がこんな人であったという思い出を綴った本です」
尽きない泉のような才能を持ちながら、日常生活では繊細すぎ、また摂食障害などに苦しんだ女性を、心から愛していたことが伝わってくる。
里中高志さんは大学1年で『グイン・サーガ』に出合い、傾倒したそう。熱意で出版許可にこぎつけ、3年の月日をかけて取材、執筆した。
「家族、同級生、元恋人、編集者、舞台関係者……各人の知る彼女の姿は、みな少しずつ違っています。その証言の数々と、膨大な著作からの引用を積み重ねるのは、広大な浜辺の砂から神殿を作っていくような、果てのない作業でした」
なかでも、常に自分の居場所探しをしていたような孤独感を持ち続けたことに触れていたのは印象的だ。
「これだけの時間を費やしても、まだまだ私が迫れなかった彼女の内なる宇宙があったかもしれませんが、それでも、いまの私にできた精一杯です。アンアンを読む若い女性たちにも、自らの夢を全力で追い求め、こんなにも濃密な人生を送った人がいたことを知ってほしいと思います。現実よりも美しい世界が、人々の想像の中に存在するのでは……。
彼女はいつまでも、そんな夢見がちなすべての人たちの味方なのですから」