くらし情報『地方で生きることの苦悩を描く こざわたまこ『負け逃げ』』

2015年12月8日 20:00

地方で生きることの苦悩を描く こざわたまこ『負け逃げ』

出ていける人と出ていけない人の対比がリアルで生々しい。

「いつか出ていくという希望を持てる高校生だけでなく、出ようとして出られなかったとか、出戻ってきたとかした大人も書きたかった。1回結果が出ているので、やるせなさを加味できると思ったからです」

だが、いまいる場所からおいそれと動けないのは、都会であれ田舎であれ、誰しも同じ。身に覚えがある感情だからこそ、共感してしまう。

本書のもう一つのテーマが、ボーイミーツガールだ。

「野口と田上の間にある、恋愛とも友情とも違う、けれど深く信頼し合っているピュアな感情にとても憧れます。私は女性ですが、女性を通して女性を書くより、男子高校生や男性教諭を通して女性を書くほうが、すんなりできたような(笑)。女性を美化しがちな男性の妄想フィルターを通すと、女の人がすごくキレイなものに見えるからでしょうか」

イヤでしかたなかった故郷。
だが、本当は少し愛しかったことに登場人物たちは気づく。だから読んだ後に残るのは、鬱々とした息苦しさではなく、息をぐっとこらえた後に思い切り深呼吸した、あの爽快感だ。

◇こざわ・たまこ作家。1986年、福島県生まれ。2012年に「僕の災い」

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