自身のツイッターのプロフィールには、「ラッパーでもバンドマンでもないです」とひと言。ヒップホップ、ロック、フォーク…さまざまなバックグラウンドを持ち、ジャンルという概念に縛られないサウンドをつくり出す、シンガーソングライターのMom。3rdアルバムであり、メジャーデビュー作となる今作は、混沌とした今の時代に生きる苦悩を、鋭い表現であえてあぶり出すような作風が印象的だ。
生きづらい現実から目を背けず、真正面から向き合った意欲作。
「誰の中にも辛い現実は見たくない、それより人生楽しく生きていたい、みたいな気持ちがどこかにあると思うんです。でも僕は、楽観主義的なことばかりではいられないとずっと前から感じていて。一回立ち止まり、少し考える。そんなきっかけになるような作品を作りたかったんです」
そのための仕掛けが“過激を演じる”こと。
湧き上がる感情をそのまま吐露するのではなく、さらにそこから飛躍して、架空のストーリーを乗せていく。必然的に表現が過激にはなるけれど、そのぶん聴き手の心に響く。それは1曲目の「胎内回帰」から強く表れている。
「生きていく中で、繰り返し押し寄せる恐怖や不安。それを感じなくて済むような圧倒的な安心感を、胎内回帰という究極の手段で求める歌なんです。