2021年4月20日 18:40
平穏な住宅地に脱獄犯が! “ナイトスクープ”のエピソードも入れた津村記久子の新作
私は“あなたの人生を変えてあげます”といって現れるものは信用していません。おこがましいわーって思う。人生が変わる瞬間は、小さな偶然の結果であってほしいし、全然違う方向から吹いてきた風が変化を与えることもある。だから失望するなって言いたかったのかもしれない」
終盤はそれぞれの行動が絡み合って意外な結果を生み、伏線が回収される爽快感が。ちなみに3世代が暮らす長谷川家の祖母にラスボスのような風格があるが、
「ロス・マクドナルドの『さむけ』のある怖い登場人物をモデルにしています。今回は大好きな夫婦作家(※ミラーとマクドナルドは夫婦)の影響を受けて書きました!そこにナイトスクープも入れました!という感じですね(笑)」
その結果、津村さんならではの極上の群像劇が生まれたわけだ。
『つまらない住宅地のすべての家』コンビニもない静かな住宅地。横領犯の女性が脱獄、この地域に向かっていると知った住民たちは交代で見張り番を立てることに。
それぞれの反応と事情とは。20人以上の日常が絶妙に交錯する群像劇。双葉社1760円
つむら・きくこ1978年、大阪府生まれ。’09年「ポトスライムの舟」で芥川賞、’16年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、’17年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞など受賞多数。