くらし情報『サスペンス満載の恋愛短編集 “ハラハラする”十市社の『亜シンメトリー』』

2021年6月5日 20:40

サスペンス満載の恋愛短編集 “ハラハラする”十市社の『亜シンメトリー』

他に3つの短編が収録されている。1話めと3話めは、大学のジャズサークルで先輩後輩の関係にある中熊美緒と千日顕、美緒の高校の後輩の紫子が登場。紫子の叔父のジャズ喫茶〈ポーギー〉で顔を合わせて交わす、緊迫した会話が秀逸だ。

「『枯葉に始まり』では、高校の美術部での事件について書き起こされたテキストを、謎としてどう活かすかから着想しました。その9年後を描いたのが『三和音』。3人の関係性が持つインパクトはいまだからこそ強いかも。設定が決まると場にふさわしい人物が現れるので、彼らを観察するように書いています」

2話めの「薄月の夜に」は一人称視点で語られるいびつな恋愛劇なのだが、「私」など自分を指す言葉が一切出てこないために、物語と不思議な体感で向き合えるのが面白い。

「意図的に人称を使わないことで、得体の知れない男という印象を持ってもらえたらいいなと考えました」

実は本書は、登場する男女の関係がどう転ぶかわからない、サスペンスフルな恋愛短編集としても一級品。
何度も読み返したくなる。『亜シンメトリー』十市さん自身も「読み返してみたら、すべて三角関係の話だと気づきました」と言うように、ハラハラさせられる危うい恋愛譚揃い。

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