2022年1月13日 20:40
元ボート難民の映画監督が語る実体験「30年ぶりの祖国では奇妙な感覚に襲われた」
自分自身の感情を洗い流すような感覚を味わうことができ、非常にいい経験になりました。
―30年ぶりにベトナムを訪れてみて、ご自身がずっと抱えてきたというアイデンティティの問題に対して、答えとなるようなものに出会えた瞬間もありましたか?
監督映画で描いているのと同じように、明確な答えというものを見つけることはできませんでした。ただ、ベトナムを訪れたことによって気がついたのは、自分のなかにある葛藤は自分の一部であるということ。「自分は何者なのかという問いには永遠に答えが出ないのだろう」という考えに到達して、それを受け入れることができました。この先、楽しい日だけではなくつらい日もあるかもしれませんが、この旅を通してそういった結論にたどり着けたのはよかったと思います。
ヘンリーは何かを持っていると直感した
―今回、キット役の俳優を探すのにかなり苦労されたそうですが、なぜキャスティングが難航したのでしょうか。
監督確かに、ヘンリーと出会うまではとても長い間オーディションを行いました。なぜ時間がかかったかというと、キットという役はすべてのシーンに出てくるような役どころなので、観客のことをずっと引きつけられる役者が必要ですが、そういう人をなかなか見つけられなかったからです。