2022年3月16日 17:30
【カツセマサヒコのショートショート】32歳・女性会社員の“人生最大級の恥”話
ころころ変えないところに、人間が詰まってる感じがして、良い』
佐藤くんの、インスタグラムのストーリーズである。佐藤くんだけをフォローしているアカウント(これをサト垢と呼んでいる)から今日も覗き見ていた彼の投稿。それに突然、心臓を鋭く撃ち抜かれた。
これ、間違いなく私のことじゃん!
いつも視界に入らないように食堂の隅から佐藤くんを観察していたはずだし、佐藤くんはほぼ毎日、同期の重松(体格がやたらデカくいかにも営業職って感じの雰囲気なのになぜか経理部)とご飯を食べるから、その重松の視界にすら入らないように最適な距離・角度を見出してテーブルに着くようにしていたのに、どうしてバレた!?佐藤くんが食器をさげるタイミングでたまたま私が視界に入ってしまっていたとか!?そんなことありえる!?
認知された喜びよりも、私が佐藤くんの目を汚していたことに対する申し訳なさが勝った。しかし、こんな私を「良い」って言ってくれるなんて、何事?これは、夢?
いやいや、待て。舞い上がりすぎだ。毎日野菜定食を頼む人なんて、ほかにもいるだろ。考えてみれば、いつも佐藤くんをおかずにして白米を食べる勢いでその姿をガン見しているせいで、ほかの人が何を食べているかなんて一ミリも興味を持ったことがなかった。