2022年3月16日 17:30
【カツセマサヒコのショートショート】32歳・女性会社員の“人生最大級の恥”話
カヨコとは大学時代から、お互いに何かあるとこうして連絡を取り合い、愚痴を吐き出す仲である。そして、やはり今、向かいの席に座るカヨコが、私の過去最大クラスの恥辱を聞いて楽しそうに笑っている。
「あのさ、こっちは本当に死にたくなってんのよ。なんか励ましてよ」
「いや、だってもうアホすぎて。あー無理、ほんとほっぺた痛い。ほら、涙出てきちゃったじゃん」
冗談かと思ったら、本当に目尻に涙を浮かべている。人の不幸を食い物にしよって!
「ああーもう呼び出さなきゃよかった。ひたすら死にたいとしか思えない。
嘘であってほしい夢であってほしいー!消えてくれー!」
両手で顔を覆いながら叫ぶ。現実は何も変わらない。
「アンタ、こんなに笑わせられるネタ手に入れたんだから最高だよ、最高」
「いや、私、お笑い芸人じゃないから」
そう言いながら、まあ、カヨコとだったらコンビを組んでもいいなとは思う。どっちがボケとかツッコミとかじゃなくて、片方が言ったことに対して、もう片方がゲラゲラと笑ってくれる。そんな関係のコンビは、なんとなくいいよなって、思う。
「人生の黒歴史とか、他人からしたら喜劇でしかないよね。それをすぐに披露してもらえたんだから、私は幸せだわ」