くらし情報『【カツセマサヒコのショートショート】32歳・女性会社員の“人生最大級の恥”話』

2022年3月16日 17:30

【カツセマサヒコのショートショート】32歳・女性会社員の“人生最大級の恥”話

カツセマサヒコさんによる『anan』新連載、ショートショート「傷と雨傘」の第1回目。しんどい人生の中にある「捨てたもんじゃない」と思える瞬間とは――。

笑わせてくれて、ありがと(32歳・会社員・家に帰りたくない さんの話)
【カツセマサヒコのショートショート】32歳・女性会社員の“人生最大級の恥”話


人生最大級の恥をかいた。

職場に好きな人がいて、その男がまあ格好良いのだ。彼がコピー機の前に立つたび、私はその長身細身のスーツ姿に見惚れて悶え苦しみ、たちまち心を溶かしてしまう。

同じフロアにいるだけで空気が浄化される気がするが、しかし、恋、とは違うのだ。彼には手が届くわけがないし、そもそも五つも歳上の地味な女なんて視界にも入らないだろう。だから、推し。
佐藤くんが幸せでいてくれれば私はそれだけで嬉しいし、佐藤くんを好きな人間として恥ずかしくない行動をしようと毎日背筋を伸ばして生きることができる。ありがとう、佐藤くん。

そんなふうに日々同じ職場で働けることに感謝しながら、個人的にはややブラックではないかと思う仕事をその日もこなしていた。

事件が起きたのは、昼休み。社食に入って、いつもどおり大して味のしない野菜定食を頬張っていた時である。

『社食でいっつも同じ野菜定食食べてる人おるけど、なんかそういうの、良い。

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