地方都市の飲食店と人間模様を描く。食をテーマにした、ごはん小説が登場
とんかつ店、ダイニングカフェ、ラーメン店、パン屋さん…。行成薫さんの新作『できたてごはんを君に。』は、とある地方都市で飲食業に関わる人たちの人生ドラマを描く。
「以前、ごはんに関わる話を2編小説誌に寄稿した時、ごはんをテーマの短編集を作りましょうという話になって。それで書いた『本日のメニューは。』という本が、宮崎県の書店員さんなどによる宮崎本大賞という賞をいただいたんです。それで、せっかくなのでもう一冊、ごはんをテーマにした短編集を作りましょう、と書いたのが今回の本です」
食をテーマにするにしても、なぜ、飲食店を舞台にしたのだろう。
「人と人が繋がる話がいいなと考えました。
たとえば家庭料理だと家の中で話が閉じてしまう。飲食店の人と客の話のほうが、世界が広がると思いました」
今回は先にメニューを決め、そこから物語を考えたという。たとえば、とんかつ店の話では、大女将と客のボクサーとの交流が語られるが、
「まず、かつ丼というメニューを候補にした時に、かつ=勝つのゲン担ぎ、というところからボクサーをイメージしました。ボクサーは減量が必要なので、お腹いっぱい食べられない。そこから食べたくても食べられない人にとっての食事の価値、というテーマに繋がっていきました」