紗倉まな「“友達”といっても、実際は…」 揺らめく感情を描いた恋愛小説集
前作『春、死なん』が野間文芸新人賞候補になるなど作家としても注目される紗倉まなさん。新刊『ごっこ』は3編を収録した作品集だ。
「他の小説を何度も書き直して行き詰まっている時に、編集者さんから『息抜きに恋愛小説を書いてみませんか』と言われて。“息抜き”という言葉に救われて、力を抜いて自由に書けました」
という本作は、人と人の繋がりの不可思議さを絶妙なタッチで描き出す。最初に書いたのは、「はこのなか」という短編。中学校時代からの女友達に思いを寄せる女性の話だ。
「私もすごく好きな親友のことを友達以上に気にしたり心配したことがあります。友達同士って、相手に恋人ができると彼との付き合いを優先されてしまったりしますよね。
突き放された友達がこんなふうに思いを馳せていることもあるよな、と考えながら書きました」
次に執筆したのが表題作の「ごっこ」。ドライブ中、助手席の男に癇癪を起こされた女性が語り手だ。カップルのケンカと思いきやこの二人、単にデートしているわけではなく…。
「密閉された空間でこんなことが起きたら嫌だな、というものを詰め込みました(笑)。強がっている感じでこちらを馬鹿にしてくる男性と、その男性を冷静に見ながら心のどこかで馬鹿にしている女性、という構図を書いてみたかったんです。