アジアの作家たちによる“奇跡のアンソロジー”も! 押さえておきたい小説界の新潮流
ディストピア小説やアンソロジー作品、詩人の書く小説について、ライターの三浦天紗子さんと吉田大助さんに語っていただきました。本読みライターの対談で見えてくる、小説界の新潮流とは?
ディストピアの世界から新しい価値観や勇気を得る。
吉田大助(以下、吉田):世界的には9.11、日本では3.11以降とくに、終末的な世界や監視社会を描くディストピア小説が盛り上がってきました。そのなかで、今すぐ海外出版されてほしいと思わずにいられない衝撃作が夕木春央さんの『方舟』です。簡単に言うと「誰か一人を犠牲にすれば全員が助かるけどどうする?」という、いわゆるトロッコ問題の話ですが、『方舟』は「それは…アリなの!?」と頭を抱えたくなるくらい究極の結論を出したんです。
三浦天紗子(以下、三浦):読みました。面白かったけどモヤモヤしたところも多かったかな(笑)。
吉田:この作品は人間の醜さや暗黒的な心理描写が特徴の「イヤミス」的な話でもある。
つまり、人として越えちゃいけない一線を踏み越えることをOKとすることで可能となった物語。現実では体験しえない感情に小説を通して触れるという意味では、小説らしい小説ともいえる。