『名探偵コナン 黒鉄の魚影』音楽担当・菅野祐悟が明かす、劇伴創作秘話
そして、映画にとってメインテーマとは、その映画の世界観や主題の提示において、大きな役割を果たすものです。例えば、レトロな気持ちで観てほしい場合はレトロな雰囲気のサウンドを、あるいは最先端のキラキラした作品として観てほしい場合はそういった音でメインテーマを作ることで、観ている人をその音の世界に誘うことができる。今回は、この作品を観たときに“2023年の音楽って、こういう感じ!”という気分を感じてほしかった。なので世界的な音楽のトレンドを意識し、さらに広い太平洋に浮かぶ〈パシフィック・ブイ〉という施設が舞台なので、海が持つ大きなスケール感も、テーマ曲で表現したい、という気持ちがありました」
映像を作る作業と音楽を作る作業は並行して行われるため、出来上がった作品を観ながら音楽を作る、というわけにはいかない。脚本を何度も読み、そのシーンに対する想像を膨らませ、メロディを紡ぐのだろうか…?
「一般的にアニメの劇場版の場合、脚本はほとんど出来上がっていて、あと絵コンテも上がっていることが多いです。そして音楽のオーダーは、“このシーンに2分57秒の音楽をつけてください”という感じなんですね。劇伴って、曲が流れるわけですが、シーンによってはセリフがかぶることもあるし、場面転換と重なることもある。