安達祐実「過去の自分が今の自分を支えてくれている感じがして嬉しい」
「加藤さんは、作品の目指す先はここです、とは明確におっしゃらないんですよね。ただ、『このセリフはこういう気持ちを持って言ってください』とか『こういう感情を出してください』と、必要な感情を説明してくださる。だからこちらは、稽古場でひたすらひとつひとつ嘘のない感情を積み重ねて進んでいく。そうすると自然と物語が描く目的地に辿り着いている感覚です。ただ、相手のお芝居で感情を昂らせることもあれば、穏やかになることもあって…。相乗効果と言うといいけれど、没入してしまって自分を客観的に見られなかったりもするんですよね」
今回の『綿子はもつれる』は、安達さん演じる綿子を中心に、すでに夫婦関係が破綻している夫と不倫相手との危うい均衡が描かれる。
「終わっている家族の話なので、会話していても全然噛み合わないんですよ。夫役の(平原)テツさんが遠慮がちに言ってくるセリフすらイライラするくらい(笑)。
でも綿子たちが特殊なわけではなく、そのときそのときに、こうするしかなかったという選択をしているうちにねじれてしまっただけで、振り返ってみたら、どうしようもないものが積み上がっていたって感じ。戻ることもできないし、進むにもそれが重たくて、綿子としては引きちぎるしかない、っていうところにいる感覚です」