くらし情報『関西育ちのゲームクリエイター・小島秀夫監督、特別な存在だった“たこ焼き”との関係』

関西育ちのゲームクリエイター・小島秀夫監督、特別な存在だった“たこ焼き”との関係

その点、油で表面を焦がした“銀だこ”は、盛り付けしても形は崩れない。美しいドーム状を維持したまま。それから、大好物になった。

そして、コロナ禍の孤立した環境下で、冷凍の“銀だこ”のお世話になることとなった。僅か数分、チンをするだけで老舗のたこ焼きが食べられる。コンビニに行けば、24時間、いつでも手に入る。素材も器具も場所も時間もいらない。失敗もしない。
なんとも便利な時代になったものだ。

ただ、これは僕が好きだったあの“たこ焼き”とは何処か違う気がする。既に工場で完成しているものを温め直すだけ。そこに、もの創りにおける創意工夫や興奮はない。素材やレシピとの緊張したあの駆け引きもない。味も外見も同じ。失敗と成功、落胆と喜びはない。創り手と食べる側に生まれるはずのドラマもない。
これは、もはや子供の頃に熱中したあの“料理”ではないのだろうか。料理をエンタテインするグラハム・カーのショー魂は、どこにもいない。

昨今の冷凍食品やレトルト、インスタント食品の進化には、眼を見張るものがある。AIが食卓に入る近い未来には、調理の風景は大きく変わることだろう。一度完成したものをチンする時代から、冷蔵庫にアプリが知らぬ間にストックした材料を、AIが瞬時に調理してくれる時代が来る。

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