巨匠の“スゴ技”に驚嘆! 版画のイメージがガラリと変わるユニーク展覧会
――海外で評価された日本の版画とは、浮世絵版画のことですか?
中尾さん浮世絵版画のすごさは、明治時代に海外で知られるようになりました。浮世絵のような分業制の職人技が光る版画も今なお評価されていますが、戦後に新しく出てきたのは棟方志功です。彼の版画は、浮世絵とはまったく異なる方法で制作し、大胆でプリミティブな表現にアーティストとしての強烈な個性と東洋の文化が融合した作品です。浮世絵と違う版画の魅力を世界の人たちが知り、棟方の版画は戦後まもない時期からヴェネツィア・ビエンナーレなど世界的展覧会で高く評価されました。
巨匠の“スゴ技”がさく裂!
野田哲也《日記 1968年8月22日》1968年 東京国立近代美術館蔵
――展示作品のなかから、特におすすめ作品をいくつかご紹介いただけますか。
中尾さん野田哲也さんの《日記 1968年8月22日》は、非常におもしろい作品です。これは、第6回東京国際版画ビエンナーレ展で大賞をとったもので、作家自身の家族写真をもとにコラージュした作品です。野田さんはカメラが趣味で、故郷の熊本に帰ると両親とともに記念撮影をしていました。
比較的古風な習慣のご家庭でしたので、紋付き袴の正装姿で撮られています。