巨匠の“スゴ技”に驚嘆! 版画のイメージがガラリと変わるユニーク展覧会
版画表現は、作家自身で開拓していける可能性のあるジャンルと認識されていた時代でした。
これは版画?印刷?
高松次郎《英語の単語》1970年 東京国立近代美術館蔵
――ほかにも、おすすめ作品はありますか?
中尾さん版画かどうか、議論を呼んだ作品をご紹介します。高松次郎の《英語の単語》です。英単語が3つ並び、読むと「この/3つの/単語」という意味になっています。本来、文字というのはある概念を人に伝えるための記号として機能しますが、この作品では紙に書かれた文字がその内容と一致してしまっています。それ以上でもそれ以下でもない、記号と意味の問題を端的に示している作品です。
――ちょっと難しい作品のように思えます。どのように鑑賞するのですか?
中尾さん描かれているものを味わうという鑑賞⽅法とは違い、鑑賞する余地を与えない代わりに、⾒る⼈に頭を使わせ、その⼈の固定概念に揺さぶりをかけます。
この時代の高松の作品は、概念を見せています。本作品は、何か別のものを表すために存在するはずの文字が自己完結することで、私たちは居心地の悪いような奇妙な感覚をおぼえます。そして、記号ではなく物質として見てみると、大量印刷できる印刷機で文字を刷っただけのものです。