小島秀夫「歳を重ねていくと映画の見方は変わるものの、好きなものは永遠だ」 “リバイバル”の魅力
映画館に入ると、驚いた。あきらかにシニアな人たちばかり。中には杖をついて必死に階段を上がってくる人もいる。後方の座席に座ると、白髪と禿頭ばかりが目立つ。仲良く並んでいる老夫婦もいる。僕は感動した。彼らは“映画と共に生きていた”のだ。映画館での特別な体験に、今も価値を感じているのだ。
老いても忘れることなく、「ドル3部作」をずっと愛しているのだと。
映画が始まる。スクリーンの中の溢れんばかりの欲望と勝機を持て余したクリント・イーストウッドやリー・バン・クリーフたちは、歳をとらず、あの頃のままだ。子供の時の初見は“GOOD”に、悪ガキ時代には“BAD”に、歳をとると“UGLY”に共感する。歳を重ねていくと映画の見方は変わるものの、好きなものは永遠だ。僕らは、映画を観て、過去を回想するだけではない。映画を観ている間、少年少女のように若返るのだ。時間を巻き戻すのではなく、再び生き返る。
エネルギーが満ちる。まさにリ・サバイバル。映画にはそんな力もあるのだ。
帰宅すると、部屋のターンテーブルには、“りばいばる”が鎮座している。僕は、忘れられない歌を、忘れないようにと、もう一度、回した。注1:「りばいばる」