山本耕史「自分の中で新たなビッグバンが起きたらと期待しています」『RENT』に26年ぶりに挑む
その物語のなかでマークは、ゴシップを扱うニュース番組からスカウトを受け、自身の作家性と目の前にぶら下げられた大きなチャンスとの間で悩む役柄。
「マークと、彼のルームメイトであるロジャーのふたりは、この作品の作者であるジョナサン・ラーソンを投影させた人物だと思うんですよね。アーティストとして、自分の音楽を追求しているロジャーに対して、マークは、自分を傍観してこのままでいいのかと悩む。自分の感情にまっすぐに生きている仲間たちのなかで、彼だけが感情を抑えて一歩引いた視点でいるんです。作品の冒頭でも、マークひとりだけ舞台という額縁の外に出てきて、観客に語りかけるんです。そこから自分も物語の中に入っていくんですけど、いつの間にか周りの仲間たちは、自分自身の物語を歩き始めていて、彼だけが取り残されていく状況になる。最終的にはマークもそこを突き抜けてゆくわけなんですが、精神的に旅をする役柄なのかなと思っています。初演は、良くも悪くも怖いもの知らずでやっていましたけど、今は、ここまでやったら失敗するなとか、こうすれば成功するけれど面白くないなとか、自分の中に選択肢が増えています。
それはいいことでもあるけれど、あの頃の後先を考えずに突っ走れる強さがこの作品と合致した部分もあったと思うんです。