小島秀夫「他人からサインをねだられる人生なんて、想像もしなかった」 “サイン”遍歴を明かす
小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第17回目のテーマは「サインの作り方」です。
突然、幼馴染からメールがあり、数十年ぶりに青山の鮨屋で再会することになった。昔からパンクチャルだった彼は、待ち合わせ時間に遅れることなく、時間通りに現れた。僕と同い年なので、彼も昨年還暦を迎えた60歳。頭に白いものが混じっているものの、すぐに“なっかん”本人だと分かった。彼とは地元の中学と高校が同じ。一度だけ同じクラスになったものの、そのあとのクラスは別だった。
活動クラブも違ったが、一緒に下校したり、映画を観に行ったりする仲だった。有名大学の経済学部を一緒に受験して、彼は合格し、僕だけが落ちた。卒業後、彼はそのまま大手電機メーカーに就職、僕は友人達の反対を押し切って、ゲーム会社に流れた。それが、お互い上京していたにもかかわらず、疎遠になった所以かもしれない。あれから40年、全く違う人生を歩んできた。ところが不思議なことに、ものの数分でタイムスリップしたかのように、あの学生時代へと戻れた。