吉沢亮の「たたずまいはまるで職人。誠実さがある」呉美保監督が明かす。
例えば、思春期に主人公がお母さんとぶつかるシーン。あのシーンだけを切り取ると非常に悲しく映るかもしれませんし、悲劇的な演出をすることもできると思います。だけど劇中では、その後、お母さんがあっけらかんとした感じで「障害者の家に生まれたくなかったなんて言われちゃったよ」とお父さんに愚痴を言うんです。
呉監督あれはかわいらしいシーンですよね。
五十嵐さんそうなんです。ここでお母さんがメソメソ泣いていたら、胸が痛んで、話が変わってきてしまう。でも、映画ではそんな風に描かなかった。もちろん大変なことはそれなりにあるんですが、コーダの主人公もろうの両親も、かわいそうな存在ではなく、ひとりの人間として映し出しています。
それこそがまさに、僕が伝えたいことでした。ろう者やコーダへの認識が変わると思いますので、ぜひ多くの方に観ていただきたいです。
ーー最後に見どころを教えてください。
呉美保監督この映画は、耳のきこえない両親のもとに生まれたコーダの物語ですが、誰もが成長過程に抱くであろう感情がたくさん詰まっています。自分のことのように共感していただけるといいなと。ぜひ劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。