橋本愛、『ローエングリン』で「自分の体を楽器のように使って、いろんな音を出す稽古をしています」
オペラというと、オペラ歌手が舞台に静々と登場したっぷりの声量で迫力ある歌を朗々と披露するイメージ。しかしこのたび上演される『ローエングリン』は、そんな既存のイメージにとらわれない異色作。本作を手がけた作曲家のサルヴァトーレ・シャリーノが、唯一の登場人物・エルザ役に指名したのは歌手ではなく俳優。しかもエルザのスコアには、いわゆる“歌”のような音階や旋律はほとんど書かれず、ため息や言葉にならない“音”も配置される。
観た方の解釈を引き出すような表現を目指したい。
「新しいことや慣れていないことって、どうしても恐怖心を抱くものですが、私はそういうお仕事こそ引き受けると決めています。だから今回のお話も絶対にやるべきだと思いました。それが今の自分を突き破る何かになると信じられたので」
迷いのないまっすぐな口調でそう答えたのは橋本愛さん。
「プレッシャーに押しつぶされそうなときもありますが、それ以上に稽古が面白くて、挑戦してよかったと思うことばかりです」と笑顔を向ける。
「メロディらしい歌もほぼなく、発するのは言葉というより音とか声というもの。それが動物の鳴き声のように聞こえたり、吐息だったり、なかには人間の体で出せるのかなと思うような音だったり。