生活がおもしろくなる? 作家・くどうれいんが“日記を書く楽しさ”を語る
を差し出されるのが嫌いだ。』と書いた日は、実は納得できないことがあって2000字ほど書き殴ったんです。ちょっと、怒っているくらいの勢いで。でも、この文章は見返したくないなと思って最後の1行だけ残しました。たった1行だけなので、記憶の断片は残るけれど、詳細に残していないおかげで思い出も曖昧になります。言ってしまえば、思い出したくないことは日記に書かないことで“なかったこと”にもできると思うんですよね。馬が合わない上司と過ごした一日の終わりに美味しい鰻を食べたのなら、『鰻を食べて美味しかった』とだけ記したら、その記憶と嬉しそうな私だけが残る。そうやって、読み返したときに楽しい1行だけの方が気持ちがいいんです」
1年間の日記をまとめた『日記の練習』には、書かなかった日が空白で記されている。
また、たった1行だけの日もあれば長文の日も。日記とは、毎日欠かさず同じ量を書くものというイメージがあったが、くどうさんの日記を読むと短くても長くても、書く日も書かない日もあっていいのだと思えて、日記に対するハードルが低くなるようだ。
「日記といえどもアナログに記録したことは一度もなく、今はパソコンで書く日もあればスマホにメモする日もあります。