本広克行監督「映画の外側のことも考えていかなきゃいけない」 『室井慎次 敗れざる者』制作秘話
って。当時はバブルで人がいなかったんですよね。そのときにめちゃくちゃなドラマを作ったら喜ばれて、先輩方に引っ張り上げてもらえた。だから僕は今、それを若い子たちに返そうと思ってやっているんです。
――先ほどの亀山さんの話もムロさんの話もですが、“自分”がモチベーションじゃないんですね。
だって僕は25歳くらいで監督になって、29歳で映画監督になれているんで、もう目標は達成しちゃってるんですよね。
――でも、巨匠と言われたい、みたいな世界線もあるわけで…。
巨匠はいっぱいいらっしゃるんで。
それより巨匠たちに可愛がられると面白いじゃないですか。コロナ前まで香川で「さぬき映画祭」のディレクターをやっていたんですが、僕の地元に、山田洋次さんや富野由悠季さん、押井守さんみたいな巨匠たちが来るわけですよ。めちゃくちゃ嬉しかったし面白かったです。自分が好きな映画とかドラマを、好きな人たちが集まって語り合って…そんな楽しいことありますか。
――巨匠になるより、人と人を繋ぐハブの役割が楽しいんですね。
自分さえ良ければっていう利己主義の人もいますけれど、利他に生きたほうがいいじゃないですか。僕は亀山さんに引き上げてもらったし、いま日本映画放送の社長をされている石原隆さんにも可愛がっていただきましたし。