それにしても、なぜこの頃、“赤裸々マタニティもの”が増えてきたのでしょう。世界的に、幸せそうに子育てをし、母、女、キャリアウーマンと、一人何役もこなしつつ、いつまでも美しくあるなどという、とてつもなく難しそうなことをひょいひょいやってのけている美魔女たちがゴロゴロいる時代。となれば、“幸せであるべき”母たちの真実は、よりいっそう理想論で閉じ込められがちです。そんな綺麗ごとに、母たちが反旗を翻えし、これが現実なのだと声を上げ始めたというところなのかもしれません。「誰も教えてくれなかった」と、これ以上後輩たちが嘆く前に。
周囲の期待と誤解、理想論の数々がどれだけ母たちを苦しめているのでしょう。もちろん、幸せいっぱいというラッキーな女性もいるでしょうが、こうあるべきだという姿を守ろうと、誰にも本音を語ることをせず、もがき苦しんでいる母たちには、「それはあくまでも理想論だから気にしないで!」、そう言ってあげたいものです。
コメディタッチで描かれているパートあり、妙にリアルで切ないパートありと、絶妙な悲喜のバランスをもって母の真実が描かれている本作ですが、実用的なだけでなく、結局はロマンティックな印象の残るとても美しい一篇のラブストーリーに仕上げているあたりはさすがフランス。