2016年1月8日 21:00
【シネマ羅針盤】スピルバーグ、新作『ブリッジ・オブ・スパイ』で挑んだ“知的活劇”
自国を脅威にさらすスパイを弁護したことで、愛する家族をも危険にさらすことになるドノヴァン。それでも「誰もが平等な裁判を受ける権利を持つ」という信念、そして老スパイとの交流を通し、立場は違えど愛国心に変わりはないと共鳴し合う人間性が、主人公を特別な存在に押し上げる点が、生粋のヒューマニストであるスピルバーグ監督らしい。ドノヴァンの誠実さはそのまま、常に観客に対し謙虚さを忘れないスピルバーグそのものだ。
『宇宙戦争』『ミュンヘン』と2本の監督作が全米公開されたのが、2005年のこと。まるで同窓会のようだった『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』、片や最新技術で仏コミックを映像化した『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』の2作品で冒険活劇を再定義し、『戦火の馬』『リンカーン』と重厚感あふれる大作を成功させた監督にとって、最新作『ブリッジ・オブ・スパイ』はこの10年を総括する、静かなる集大成といえそうだ。
スピルバーグ監督といえば、ロアルド・ダール(『チャーリーとチョコレート工場』)による児童小説を原作に、少女と巨人の冒険を描いた最新作『The BFG』(原題)が今夏、全米公開される予定で、こちらも楽しみになってきた。『ブリッジ・オブ・スパイ』は1月8日(金)より公開。
(text:Ryo Uchida)
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