デンマーク人画家たち、特にヴィルヘルム・ハンマースホイにもインスパイアされた。白・黒・灰色を基調とした彼の作風は、アパート内部のセットをデザインする際にアイディアとして取り入れた。アイナーとゲルダの結婚生活は、順調ではあったけれど、何か違和感があるということを暗示するような、主人公たちの孤独感を表現するような雰囲気を出したかったから。何かが起こりそうなムードというものに気づいてもらうためにね」。
―脚本を読んだとき、3回泣いたそうですね。
「たぶん2回だったと思う。でも、PR担当が3回と公表しているね(笑)。それはともかく、まずは二人の愛の物語に打ちのめされたんだ。
だから、この物語は観客に届くと感じた。結婚とは長期間にわたる人間関係の最たるもの。人間は変化する。その極端な例が、リリーへとトランジションしたアイナーだ。この変化に直面し、挑戦し、打ち勝つ愛や思いやりが二人の間には溢れている。それが美しいと感じたんだ。特に夫を失う立場にあるゲルダの愛は大きい。ゲルダは夫を愛しているけれど、リリーが彼女らしく生きるために何ができるかと考えサポートする。
この物語は喪失と愛の物語なんだ」。
―その一方で、ゲルダはリリーを描くことで、画家としての才能を花開かせ成功を手にしますね。