2016年10月3日 19:30
【シネマVOYAGE】『レッドタートル』男と女の物語はシンプルで深い セリフなしの“心の旅”へ
スタジオジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』の原作・脚本・監督はマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。馴染みのない名前だと思いますが、2001年の米アカデミー賞短編アニメーション映画賞をはじめ、多くの賞に輝いている8分半の短編『岸辺のふたり』の監督で、彼の初の長編アニメーション映画がこの『レッドタートル』です。
もともと『岸辺のふたり』の世界感や絵のタッチが好きだったこともあり、『レッドタートル』は楽しみにしていた1本でした。しかも今回は81分の長編!『岸辺のふたり』はセリフがなかったこともあり、この新作にセリフはあるのかないのか、タイトルにある“赤いカメ”のどんな物語なのか、興味は膨らむ一方でした。…で、セリフは──『岸辺のふたり』と同様にありません。制作当初、少しだけあったそうですが、スタジオジブリの高畑勲監督の「ぜんぶ削った方がいい」というアドバイスを受け、ナシになったのだとか。
物語はとてもシンプルです。旅の途中、荒れ狂う海に放りだされた1人の男が無人島にたどり着き、赤いカメと出会い、そして1人の女と出会う。
出会った2人がどう生きていくのかが描かれます。セリフがないということは当然、男と女の行動と彼らを取り巻く状況から物語を把握しなくてはならなくて。