2020年12月31日 16:00
『鬼滅の刃』大ヒットによる錯覚と、正念場を迎える2021年の映画界
12月9日に発表された東宝の2020年11月映画営業部門興行成績速報によると、2020年11月の東宝の興行収入は154億2375万円。前年同月比は1063.3%。つまり、このコロナ禍において、東宝は昨年同期の10倍以上の興行収入を得たことになる。
しかし、『鬼滅の刃』一作で2020年の日本の映画界が救われたとするのは錯覚であり、大きな誤りだ(確かに東宝は救われたかもしれないが)。コロナウイルスのパンデミックは、人々の行動様式、海外メジャースタジオ作品の配給体制、独立系の映画配給会社や映画宣伝会社や『鬼滅の刃』を上映してない街の映画館やミニシアターの経営などに決定的な影響を与えて、その中には仮に2021年中に平常が戻ったとしても「戻ることがない」ものもあるだろう。2020年の映画界に本当は何が起こっていたのか?ーーそれに多くの人が気づくのは、きっと2021年になってからだ。
(text:宇野維正)
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