【文豪を演る】インタビューvol.3 塚本高史 as 芥川龍之介 天才肌の軽妙な“魔術”
言葉ではうまく言えないんですが、台本から得たインスピレーションを基に現場で膨らませていく感じですね。文字で書かれているものを『実際に生身の人間として動くならこんな感じかな?』といった具合に、役柄と自分が半分ずつくらいのところから少しずつ役に近づいていく。役の方も僕に近づいてきて、現場でそれが100%、120%になるイメージかな」。
主人公はあるインド人から魔術を習うのだが、その魔術を使うには“欲”を捨て去らねばならない。無心と物欲のはざまで揺れ、欲深さをある種、正当化さえしようとする人間の一面が軽妙に描かれるが、塚本さん自身、共感する部分は?
「まず、この主人公にある種の純粋さを感じましたね。奥手で、言葉では思いを表現できない人間が何かひとつを――ここでは魔術ですが――習得することで、やっと自らの心の内を表に出そうとする。それこそが人間なんじゃないか?と共感する部分はありましたね」。
人間の内面をえぐり出す――。
そう聞くと何やら重苦しさを感じるが、先にも述べたようにこの作品におけるその表現は“軽妙”という言葉に尽きる。特に、主人公と村上淳扮するインド人の魔術師が対峙するシーンはほぼ、コメディである。