2023年12月30日 14:00
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』に見る現代ノワールの新たな可能性
また、水木が最終的に戦後の日本で負け犬にならないために憧れ、取り入ろうと考えていた龍賀時貞の考え…つまり富を得て映画の中の言葉を借りるならばいい女を手に入れるということ…を水木が「つまんねえ」と言い捨てるシーンもあった。最初は考え方の違っているように見えたふたりが、次第に共鳴できるようになるということもノワールの重要な点であると考えている。
しかし、『ゲゲゲの謎』を見返して見ると、そのようなノワール的な男同士の絆を描くシーンは、そこまで多くはないようにも思えた。しかし、別の要素でも昨今のノワール、特に韓国ノワールとの共通点が見いだせるのだ。
昨今の韓国のノワールは、軍事政権から民主化までの過程や、日本統治時代のことなどを振り返るものが多い。『ゲゲゲの謎』も、戦争の記憶、過去の振り返りたくない過ちの記憶から目を背けずに振り返っているところにも、昨今多くみかける韓国ノワールとの共通点が感じられる部分だ。
日本統治時代の映画では、戦争による恩恵を受けたものは、自然と家父長制と深くつながっていることは多い。なぜなら、子孫を産み、家を存続させることが、一族の繁栄につながるからだ。
その家父長制によって縛られ、犠牲となるのは、やはり若い女性になる。