2024年2月12日 13:00
映画『梟ーフクロウー』時代も国も超える超感覚スリラー…常闇に紛れる真実を見逃さないで
世子が8年ぶりに帰郷したのも束の間、その不審な死を盲目の鍼医が目撃する、という物語。118分、ひとときも目を離すことのできない宮廷での闇を描いている。
秘密を抱えた盲目の鍼医、不仲の父子(王と王子)関係、宮廷で蠢く権力争いなど、濃密な人間ドラマとしても見どころポイントは満載だ。リュ・ジュンヨルが演じる盲目の鍼師チョン・ギョンスは、心臓に病を抱えた弟を養うため鍼医として宮廷の内医院に入る。すぐにその有能さを買われると、帰郷時から咳こんでいたソヒョン世子(※世子:王の跡継ぎ)に鍼を打つことになる。
清で8年もの間、人質となりながらも見聞を広めて帰ってきた世子は、朝鮮の将来のためには西洋と交易している清と手を結ぶことが最良と考えていたが、清に根深い恨みを持つ父・仁祖はまるで聞く耳を持たない。仁祖が世子に向かって硯を投げつけた、というエピソードも史実にあるほどだ。
先見の明があり思慮深い世子に、ギョンスは「物事が正しく見えるゆえに体調が優れないのです」と鍼治療の後に言い添える。
そして、ときには「目を閉じて生きるほうが体によいときがあります」と話す。自分のような身分の低い者、社会的な弱者は“見ざる、言わざる、聞かざる”で、何も知らないふりをしているからこそ宮廷で仕事ができ、生きていくことができる、というのだ。