くらし情報『ニナ・メンケス作品に見る、#MeToo以降改めて問われる「映画」との向き合い方』

2024年5月11日 12:00

ニナ・メンケス作品に見る、#MeToo以降改めて問われる「映画」との向き合い方

ニナ・メンケス作品に見る、#MeToo以降改めて問われる「映画」との向き合い方

メンケスの映画には炎のモチーフが随所に鏤められているが、社会に対する怒りの形象化を担うそれもまた、ボーデンの映画との共通性を感じさせるだろう。

『マグダレーナ・ヴィラガ』は客の男が覆い被さっているアイダの顔をクロースアップで映し出し、ロングテイクによってその表情を執拗に追う。男たちは自らが快楽に耽るのにただ夢中であり、アイダが顔を歪めようと女の感情など意に介さない。これまで女の恍惚とした表情と肉感的な身体をクリシェとしてきた同様の局面において、その映像は異化作用を放つ。そこに男のファンタスムは一切存在しない。


ニナ・メンケス作品に見る、#MeToo以降改めて問われる「映画」との向き合い方

アイダが殺人の容疑で捕まって収監されてしまった刑務所の独房と、それまで過ごしていた外の世界に、果たしてどんな違いがあるのか。そこでもまたアイダは警察による国家権力という男性的暴力を振るわれることとなる。「私たちは姉妹ではない姉妹、私たちは孤児の姉妹」と形容される女たちの繋がりが、彼女の放り込まれた地獄の一縷の希望であるかのように織り込まれている。

ニナ・メンケスの最高傑作となった『クイーン・オブ・ダイヤモンド』

ニナ・メンケス作品に見る、#MeToo以降改めて問われる「映画」との向き合い方

『マグダレーナ・ヴィラガ』の女性と労働の問題を引き継ぐ『クイーン・オブ・ダイヤモンド』は、ラスベガスでカードゲームのディーラーとして生きるフィルダウスというひとりの女性の日常を追う。

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