『流麻溝十五号』時代背景を解説―なぜ離島に閉じ込められた彼女たちは日本語を話すのか?
『流麻溝十五号』の周美玲(ゼロ・チョウ)監督は、白色テロで捕らえられた人の多くは、台湾の自治を願った知識人たちだったと言う。
この映画を観ていると、さまざまな言葉が飛び交っていることに気づくだろう。当時の台湾の知識人といえば、主に日本時代に教育を受けた人々である。高校生の余杏惠(ユー・シンホェイ)をはじめ、日本語を話している登場人物は台湾生まれだということが分かるし、いわゆる中国語を話しているのは蒋介石率いる国民党政権と共に大陸から来た人々だと分かる。看守たちに中国語話者が多いのはそのためだ。ダンサーとして看守に特別待遇を受ける陳萍(チェン・ピン)も、そのうちの1人。「なぜ大陸から来た人まで弾圧を?」と思われるかもしれないが、中国共産党の理念に賛同する人々も、俗にいう“アカ狩り”で共産党のスパイ容疑を掛けられ、大勢が捕まった。
本作のゼロ・チョウ監督によると、映画の舞台になった台湾の南東部の離島・緑島の監獄に収容された女性思想犯のうち、大陸から来た女性は実に53パーセントを占めたという。
このあたりの大陸出身者の苦労については、現在開催中の「台湾巨匠傑作選2024」で上映されている王童(ワン・トン)