アナ・ケンドリック初監督『アイズ・オン・ユー』にある真実…違和感が恐怖に変わる決定的瞬間をとらえる
番組側が考えた男性たちへの質問もあまりにもシェリル自身とかけ離れていたため、彼女はCM中にメイクアップ担当からペンを借りて、彼女なりの質問を考えペンを走らせる。その内容はウィットに富み、回答次第で“私を傷つけるのは誰なのか?”“私を尊重しないのは誰なのか?”を推し量れるような核心をつくものばかり。そんな彼女を、司会のエドはさぞ小賢しい女だと思ったことだろう。
だが、最も口当たりのいい言葉を並べてシェリルの心を掴んだ男性こそアルカラだった。劇中では「ザ・デートゲーム」の最中にも彼の異様さを随所に盛り込み、1971年に起きていたニューヨークの客室乗務員の事件や、ロサンゼルス・タイムズ勤務時代に自身の“作品”を見せびらかしていた過去のアルカラを挟んでいく。
知らぬは、シェリルばかり。番組を終えた彼女は待ち伏せしていたアルカラと食事をともにするが、会話の中でシェリルが言い返したふとしたことから、それまで“感じのよかった”彼が一変する。2人の間に生じる、微妙な空気の淀み。
さらにその後のスタジオ駐車場のシーンは、アルカラとは物理的距離がありながらも、ある意味どんなスリラーよりも恐ろしい時間となった。