アナ・ケンドリック初監督『アイズ・オン・ユー』にある真実…違和感が恐怖に変わる決定的瞬間をとらえる
その不安の増幅をアナ・ケンドリックはスリリングに顕在化する。誰もが多少なりとも身に覚えのある、おぞましくリアルな瞬間である。
彼女は笑顔ながらも、はっきりと「ノー」と首を振ったはずだ。それでも「空気を読んで、彼の顔色を伺ったから誤解された」と自分を責めるべきだろうか。たとえ笑顔を作っていても、仕方なく「イエス」と言ったとしても、それは自分自身を守るためのやむを得ない唯一の手段であることは1979年の家出少女も示している。
また、スタジオで「ザ・デートゲーム」の生放送を見守っていた観客のローラは、かつてレイプされて殺害された友人に声をかけた不審なフォトグラファーがステージ上にいることに気づいていた。だが、ローラがスタジオの警備員に訴え出ても、警察に向かっても何の対応もなされなかった。
同じように訴え出たのが、例えば「ザ・デートゲーム」に登場するような男性だったなら結果は違っていたのかもしれない。こうした数々の不条理と気味悪さが、本作には終始貫かれていた。
なお、アナ・ケンドリック監督は本作の報酬全てを、慈善団体を通して性暴力のサバイバーたちに寄付している。
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