ソロシネマ宅配便 第7回 『バクマン。』大人にオススメしたい“中年ジャンプムービー”
だが、映画版『バクマン。』は「友情、努力、勝利」でそんな日常を突破しようとするのだ。
そして、このシーンの直後に、もし自分たちの漫画がアニメ化され、声優を目指す亜豆がヒロイン役をやる夢が叶ったら結婚してくださいなんてサイコーは唐突にプロポーズする。いやーさすがに小松菜奈の絶対に教室にはいないだろう的な異常な可愛さを持ってしても強引すぎる。ここまで約10分、特に原作ファンはあまりの急展開ぶりに戸惑うだろう。
なぜなら、亜豆との関係は駆け足で処理し、原作で重要な役割を担った亜豆の親友・見吉香耶は映画版に登場すらしない(美人漫画家の蒼樹紅やシュージンに惚れる同級生の岩瀬愛子もいない)。つまり、この映画のメインテーマであり柱は恋愛ではなく、あくまで「漫画」だと序盤から宣言しているわけだ。
賛否分かれるだろうが、個人的にこれは英断だと思う。
正直、少年漫画の恋愛シーンは大人(俺らみたいに汚れちまった中年男)には感情移入が難しい。個人的に『バクマン。』においても、リアルな漫画の世界と対照的な、ファンタジーあふれる男女関係の恋愛パートには乗れなかった。だから、いわば汗臭い「バトル漫画映画」路線は大歓迎だ。