ソロシネマ宅配便 第7回 『バクマン。』大人にオススメしたい“中年ジャンプムービー”
ふたりと同じ17歳の天才漫画家・新妻エイジ(染谷将太)との大きなペンを剣のように使って戦うライバル対決。佐々木編集長(リリー・フランキー)や担当編集マン・服部哲(山田孝之)との出会い。口は悪いが情に厚いヤンキー漫画家・福田真太(桐谷健太)や35歳の万年アシスタントからの脱却を狙う中井巧朗(皆川猿時)との邂逅。とにかく、男臭い。ひたすら、暑苦しい。なにせ映画唯一の露出がパンツ一丁でペン入れする中井の半裸である。
そりゃあ、なんで週刊連載でアシスタントがいないんだ…とか、上映時間の関係で原作の名シーンの数々にもほぼ触れずという小さな突っ込みどころはある。けど観終わった後、無性に主題歌のサカナクション「新宝島」を大音量で流しながら原稿を書きたくなった。
作品の熱に背中を押され、何かやりたくなるこの感じ。これって『キャプテン翼』を読んで放課後のサッカーに熱中したり、『スラムダンク』に影響されて昼休みにバスケに燃えたあの頃の気分と同じだ。
映画『バクマン。』は、最近ジャンプを読んでない、「友情、努力、勝利」より「貯金、結婚、老後」を心配しちゃう、すっかりいい大人になった元・少年たちにこそオススメしたい、“中年ジャンプムービー”なのである。
アカデミー賞、長編アニメ映画賞のノミネート対象作品に『ルックバック』『化け猫あんずちゃん』『きみの色』など31作品