2015年1月30日 09:34
『「個性」はこの世界に本当に必要なものなのか』 - 個性の意味を問いなおす
もっとも、本書には「個性とは◯◯のことである」といった明確な定義や答えそのものが書かれているわけではない。本書は、東京大学教養学部の研究者10人による個性についての談話から構成されており、そこで出される個性についての見解はあくまで話者それぞれのもので、明確な1つの「正解」があるわけではない。「とりあえず答えを知りたい」という人には向かないが、「いろんな意見に触れて自分なりの考えを深めたい」と思っている人には最適な本になりうるだろう。
○9つの学問分野から見た「個性」
本書で「個性」について意見を述べている研究者の専門領域は非常に多岐に亘っている。具体的には、認知神経科学、文献学、生態学、哲学、物理学、統計学、政治学、天文学、言語学の9つの学問分野が対象になっており、当然ながら各研究領域によって視点に大きな違いがある。
たとえば、認知神経科学の研究者は個性を「脳の使われ方の違い」として上で、遺伝や環境因子がどれだけ個性の形成に影響しているかという視点で個性について語っている。統計学の研究者は「統計学は個性を切り捨てる学問ではない」と前置きをした上で、個性を測定するためのコストが高いことについて説明している。