ソロシネマ宅配便 第15回 稲垣吾郎、『半世界』で見事に演じる“39歳中年男”のリアル
あなたは中学時代の友達と付き合いはあるだろうか?
高校や大学の仲間とはたまに連絡を取ったり、飲んだりするけど、小学校や中学校の友人はさすがに……という人も多いのではないだろうか。自分の場合も十代後半に進学で地元を出て以来、ほとんど付き合いはない。成人式にも出席しなかった。今みたいに携帯電話の連絡先やSNSもなかったので、卒業したらサヨウナラだ。
○■ヒリヒリするぐらいリアルな映画『半世界』
だから映画『半世界』がヒリヒリするぐらいリアルで、同時にこれ以上ないファンタジーにも思えた。物語の舞台は地方の田舎町、父から受け継いだ炭焼き窯で、職人として備長炭を製炭する39歳の高村紘を稲垣吾郎が演じている。仕事を手伝い毎日弁当を作ってくれる妻の初乃(池脇千鶴)、反抗期の息子・明(杉田雷麟)、そして小学・中学の同級生で中古車屋を営む岩井光彦(渋川清彦)らに囲まれる日常。
そんなある日、同じく同級生の沖山瑛介(長谷川博己)が自衛隊の海外派遣から、妻子とも別れ、何の前触れもなく帰ってきた。
「おまえより、おまえのことを知っている」という古い友人たちと、何を語るのか?大人になった今、あいつに何をしてやれるのか?
結論から言うと、今40歳前後の人にはたまらない映画だ。