女の節目~人生の選択 (12) vol.12「初めての、泥酔」【20歳】
という魔法の呪文だった。大人になれば、先生の言うことに従わずに済む、団体行動もしなくて済むし、同級生の顔色も窺わなくて済む。「大人と同じように酒が飲めるのは、いいことだ」という両親の教えがそこに重なって、「早く酒が飲めるようになれば、早く大人になれるんじゃないか」そんな気がしていた。
古今東西、こうやって間違ったルートで大人の階段を駆け上がろうとする子供は、少なくないのだと思う。肺癌のリスクが怖くて喫煙にこそ手を出さなかったが、代わりに、中学生くらいからちびちびと父母の晩酌の相手をしていた。どんどん強い酒が飲めるようになって、スモーキーなアイラモルトが好きになり、アブサンやスピリタスも舐めた。さまざまな味の日本酒を飲み比べる愉しみも覚えた。舌が肥え、知識が増えていくのは「早く大人になれたみたいで」嬉しいことだった。
「初めてお酒を飲んだのは、いつですか?」という問いには、答えられない。小さい頃から、毎朝伸びる麻の苗の枝葉を飛び越えるようにして、私のアルコール耐性は鍛え上げられていった。「初めてお酒で失敗したのは、いつですか?」という問いにならば、「20歳」と答える。「いやー、どうも、20歳を過ぎたあたりから、めっきりお酒に弱くなっちゃったんですよねー」